Yesterday Once More
「帽子が悪いことの身代わりになってくれたんだよ」
子どもの頃、父と犬の散歩でよく歩いた境川沿い。私のえんじ色のベレー帽が風で飛んでしまって川に落ちた時、泣く私を父が慰めてくれたっけ。子どもの頃は何でもできると根拠なく思っていた。大人になって自分一人では乗り越えられないことが起きて、自信をなくしたり、落ち込んだり。でもだからこそ手を差し伸べてくれる人の温かさを知った。歳を重ねることで見えてくる景色もある。
そんなことを考えながら湘南海岸公園駅に降り立ち、物件まで歩く。住宅街の中にさりげなく佇んでいる白いおうち。とくに目立つわけではないけれど、よく見ると木製の門やロックガーデンの緑は抜かりなくデザインされており、この家がこの街の景観の1ピースとして欠かせない存在になっていることを思わせる。大きな吹き抜けの明るいリビングにはアメリカンヴィンテージの家具がよく似合っている。アイランド型のキッチンは広々と使い勝手もよさそうで、友達が来たときもワイワイと楽しめそうだ。キッチンの窓から江ノ電が眺められるのもいい。
家から少し歩いたところには地元の人に愛される小さなコーヒースタンドがある。コーヒーと江ノ電と海。私をほっとさせる組み合わせ。久しぶりに江ノ電にのる。ゴトゴト揺られて海を見ていたら、ふとカーペンターズの曲「イエスタディワンスモア」のフレーズが思い浮かんできた。
every sha-la-la-la still shines
すべてのシャラララはまだ輝いている。
(すべての過去が今も輝いている)
時間を重ねることで、良さが引き立っていくこの歌のように。
時を重ねることでより味わいを増していく家だと思います。
(す)
