時を超えるレトロモダン
その場所がまとう空気感というのは、
現地にいかないとわからないものです。
時間による光の変化の違いや、肌をかすめる風の湿度、耳を澄ますと何が聞こえるのか。AIが発達して物件情報を提供してくれる世の中になりつつありますが、何に癒されるのか、そこに未来はあるのか、といった総合的判断は、五感を研ぎ澄まして、さいごは自分との対話になるのだと思います。
物件の方は、葉山を代表するヴィンテージマンションの一室。現状の内装は建築当初から一部改装しているものの、量産されたシステムキッチンや古いクロス貼りは、正直味気のないもの。ツルツルピカピカするものよりも、自然な風合いのザックリとトロッとするような意匠に魅力を感じます。その魅力は時を超えることへの憧れとも言えます。
そして、何よりも最上階の眺望ポテンシャル。エコーハイツの中でも、北東側に位置することで山と海とが見える爽快感が目の前に広がります。リノベーションしたら気持ちよい空間となることでしょう。その風景を取り込むような、下記図面のリノベーション案を参照頂きたいのですが、南北を一体にした奥行きの深いプラン。大きくレイアウトされたキッチンスペースを中心に緩やかにつながる個室が心地よいシークエンスを生み出します。
ヴィンテージと言われるものと、そうでないものとの境界は「愛」にあるのではないかと思います。つくり手の愛、使い手の愛、引き継ぎ手の愛、時を超えるには、人が変わったとしても、愛せる何かが必要です。その何かはその場所でご自身で感じとって下さい。
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